2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

二つ月の神話 終

「雛鳥!」 凪が雛鳥を呼んだ。 「行こうか」 凪が言った。 「導いてくれ、我々を」 「ええ」 渡りの民を乗せた幾艘もの舟が陸地を離れていく。 雛鳥には、解放された龍の子達が陸地を走る姿が見えた。走って、走って、やがて龍の子達は龍となり、くるりと回…

二つ月の神話 三(15)

「あんたの身に起きた事は酷い出来事だけど、でも、全ての子供が経験する事でもある」 小波が言った。 「親が、子供を守りきれずに子供の心が傷付けられる。そして子供は親が神様じゃないことを知る」 「雛鳥、あんたの母親は少なくともあんたを愛していた。…

二つ月の神話 三(14)

雛鳥が起きて洞窟の外に出ると、慣れ親しんだ曇る土地の風景は大きく変わっていた。 双翁山の二つあった山頂が、一つになっていたのだ。 見えない龍の小鳥が曇る土地の下から解放されたことで、激しい地震が起き、山の一つが崩れてしまったのだろう。 あれ程…