二つ月の神話 三(12)

 大地が激しく揺れた。

 揺れは長く続き、唸るような大きな音が響いた。巨大な龍の鳴き声だ。
 しかしそんな声も直ぐに雛鳥の耳には聞こえなくなり、気がつけば雛鳥は無音の中、二の月と共に巨大な見えない龍に乗っていた。
 見えない龍は、何重もの雲を突き抜け昇って行く。そして、
「小鳥を解放してくれてありがとう、雛鳥。そして二の月、私の片割れ。私はあなたを許しましょう」
 そんな声が聞こえて、見えない巨大な龍は雛鳥達を置いて、光の中に飛び去っていった。
 光が消え、再び雛鳥は暗闇の中に取り残されていた。
 雛鳥は暗闇の中を歩いていった。
「良かった、これで僕は呪いから解放されたんだ」
 背中でそんな声が聞こえた。
 それっきり声は聞こえなくなり、ただ、雛鳥が背負っていた体が重くなった。