雛鳥は体を引き摺りながら、水場を探して森をさ迷った。小さな見えない蛇達を辿って、湧水を見つけた雛鳥は、痛みを堪えて傷を洗い、木の枝で指を固定して裂いた服の裾を巻き付けた。
片手でそれをやるのは酷く時間がかかった。
全てをやり終えた時には日が暮れかかっていて、雛鳥は近くに木の虚を見つけて、その中に体を潜り込ませて夜を明かすことにした。
傷の痛みで中々眠ることが出来ない。
雛鳥は考えていた。
囲いの集落にいた頃の自分と、今の自分は同じ自分なのだろうか。
幼い頃の雛鳥は、全ての人に愛されていた。
今、雛鳥は独りだ。全ての人が雛鳥の敵だった。
結局眠ることが出来ず、夜明けの頃に漸く瞼が閉じられた時、雛鳥は夢うつつの中で誰かの足音を聞いた。
足音の主は雛鳥の側でボソボソと何か言い、木の虚の中から雛鳥を引っ張り出すと、背に担いで再び歩き出した。
雛鳥は、半分夢の中で、揺られていた。