指は幸いにも動かせるようになり、雛鳥は名無し神の下を去ることにした。
「君は帰る場所が無いんだろう?好きなだけここにいればいいのに」
「でも、私は戦わなければいけない相手がいるの。傷も治ったし、行かなければならない」
「剣を持っていない君が戦うなんて出来るわけがない」
「どうして私が剣を持っていたことを知っているの?」
雛鳥は言った。
「あなたが剣を隠したのね」
「あの剣は私の剣だ」
名無し神は言った。
「あの剣は私の剣よ」
雛鳥はそう言って、名無し神の下を立ち去った。
名無し神が剣をどこに隠したかは確信があった。
雛鳥は、西の祭祀場跡に向かった。
かつて、曇る土地が今より多くの人が暮らし、今より多くの集落があった頃に使われていた祭祀場だ。しかし、様々な災害が起こり、曇る土地の人々は減り、祭祀も以前のようには続けられなくなった。
剣は、組み立てられた石場の影に、捨てられたように落ちていた。
雛鳥は、剣を拾うと、さらに西へ向かって歩き出した。