雛鳥は、祭壇の上で踊り続けていた。
雛鳥は長い踊りの中で、体力が奪われていくのを感じた。一方巨大な龍は少しの疲れも見えなかった。
覚えた長い踊りももうすぐ終わる。そこからは雛鳥自身が踊りを続けなければならない。
祭壇の血の染みが雛鳥の目の端に映った。
(クス・シイ…)
クス・シイはきっと、雛鳥を助けようとしてここにきたのだ。そして巨大な龍に食べられた。そのことを考えると、雛鳥は震えるほど怖くなった。
クス・シイは死んだのだろうか?
まだ、死者の国の手前で踏み止まってくれていれば…。
雛鳥の剣が、見えない龍の鼻先を切った。
巨大な龍が、吠える。
雛鳥は、ふくろう神の頬を切ったことを思い出した。この剣でなら、傷をつけることができる。
しかし、このままこの場所で戦い続けても、勝ち目があるとは思えない。
ならば、習った踊りの振り付けが終わる前に、龍の動きが予測できる内に。
雛鳥は、龍の口の中に飛び込んだ。
龍は、繰り返す生き物。巡る生き物だ。季節のように、水のように、風のように。
しかし、この巨大な龍は、洞窟から首を出し、もがくように暴れているだけだ。
流れることが出来ずに、ここに留められているのだ。それは何故か?
その答えを、雛鳥は探さなければならない。