二つ月の神話 三(4)

 雛鳥は夢を見ていた。
 夢の中で空を飛び、雛鳥は再びあの神の前にいた。
「籠目も、あなたと同じ年の頃、よく夢の中で私に会いに来たわ」
 神は言った。
「籠目…」
 雛鳥は、よく知る人の顔を思い浮かべた。
「それは私の母の名よ」
 神は頷いた。
「あの嵐と洪水は、母が願ったことなの?」
 神は再び頷いた。
「私は私の片割れと争いを起こしてから、地上へ降りることはできないの。私の片割れは地上で暮らし、そして私は天上で暮らす、そう取り決めたから。だから籠目があなたを救ってと願った時、私には天上から嵐を起こすことしか出来なかったのよ」
「じゃあ、生け贄を求めている神はあなたではないの?」
「言ったでしょう。私は天上の神。地上に何かを求めたりはしないわ」
「じゃあ、一体誰の生け贄に私はなるの?」
「それはもうすぐ分かるでしょう?」