二つ月の神話 三(2)

 クス・シイは過去を振り返り、そして決めた。
 雛鳥を何とかして助けよう、と。
 クス・シイは迷ったが、覚悟を決めて渡りの民の野営地へ向かった。
 
「クス・シイが戻って来たぞ!」
 渡りの民は、今にも掴みかからんばかりの様子だったが、小波がそれを止めた。
「雛鳥が大変なんだ。凪に会わせて」
 クス・シイの言葉を聞いて、小波は頷き、先導した。
「凪、クス・シイが帰ってきたよ。すぐにでもお説教を始めたい所だろうけど、取り敢えずその前にこいつの話を聞いてやってよ」
 小波はそう言って、口を開きかけた凪を制した。凪は溜め息をついて頷き、クス・シイに話すよう目で促した。
「雛鳥が、生け贄になる為に曇る土地に戻った」
 クス・シイは簡潔にそう言った。
 凪は目を見開き、
「自分自身の意思でか?」
 と聞いた。
 クス・シイが頷くと、凪はフーッと息を吐き、
「そうか。そっちの道を選んだのか」
 と言った。
「お願いだ、雛鳥を助ける為に力を貸して欲しい。雛鳥が必要なんだろ?」
「しかし雛鳥は、自分で選んだんだろう?」
 凪は言った。
「とにかく、今のお前達は渡りの民からの評判が悪い。馬を逃がしてしまったのだからな。お前達は我が儘を通しすぎた。今さらお前達を助けようと渡りの民を説得したところで賛同は得られんだろうよ」